飛行訓練が始まりました。
エンジニアリング・システム株式会社に入社して早くも3年がたとうとしています。いままで他のパイロットが飛ぶのをただ見ているだけでしたが、いよいよ自分の番がまわってきました。
今回は舵のコントロールを足をつけた状態で行い、その場に居続けることが目標です。
この訓練によりパイロットは微小な外乱や風に対して適当なあて舵を打つことを学んでいきます。
GEN H-4の操縦をするに当たって避けては通れない訓練です。
機体の背後には教官がついていて、機体が不安定になった時にはおさえてくれる段取りになっています。
操縦席に座りシートベルトをしめ、エンジンを順番にかけます。
タンタンタンタンという排気がマフラーを叩く音とともに、エンジンの振動がハンドルを通して伝わってきます。
親指でスロットルレバーを押し込むと、エンジンの回転数が上がっていきます。タコメーターが3500rpmを示したあたりから強い振動がハンドルからつたわってきました。けれど、そこを過ぎると振動はまた少なくなっていきます。それでもハンドルがぶれないように力をいれてスロットルを動かしているので、左ひじがだんだんあつくなってきます。
5000rpmのあたりで後ろにいる教官から舵をすこし動かしてみるようにジェスチャーで指示がきました。恐る恐る舵を引くと、しばらく遊びがあった後、機体がぐっと前に行きたがる感触がつたわってきます。前後、左右に少しずつ舵を動かし、ハンドルから伝わってくる機体の感触をたしかめました。
徐々に回転を上げていくと同時に舵の遊びの範囲が少しずつ小さくなってくるようです。と、同時に機体がぐーっと上に引張られる感触が背中から伝わってきました。まるではやく上にいこういこうと機体が背伸びをしているようです。
エンジンの回転数が6000rpmを超えました。それでもまだ両足と車輪はついたまま。
ふんばっているので両足には力がかかっています。わずかな風にも機体が押されてしまうのを足で踏ん張ってささえているのです。
両足で立ち上がるには6500~6900rpmまで回転数をあげる必要がありますが、今回の訓練はここで終了となりました。
終了後の教官の一言。
「これで3回はひっくりかえってるな」
足に力を感じているうちは外部の微小な外乱に対してあて舵が打てていないということなのです。足を離した状態、すなわち地面と縁が切れた状態であて舵が遅れると、足にかかっている力分機体は流されてしまいます。空中に浮いているヘリコプターはエアホッケーのパックと同様わずかな力でもすっと動いてしまうのです。
今回は「機体にすわってみて、エンジンをまわした」だけになってしまいました。
次回はちゃんと立ちあがって機体をコントロールしたいです。